ののさんがはなさんに宛てた手紙の一文
「得られなかったものをいつまでも欲しがるのではなく、新しくだれかに与える人間でありたい。
悦子さんがそうだったように。」
(本文P262より)
この一行、私はすごく大好きな一行だと思いました。
悦子さんというのは、ののさんの、少し大人になってからのお相手です。
非常に魅力的な、スカッとした小気味いい女性といいましょうか、
読んでいてとても好きになりました。
悦子さんは不治の病に侵されていて、
ただすごく新鮮に、「ちょっと外国に行ってくる」という言葉を残して、ののさんと別れて行きます。
自分もこの世を去る時は、こういう風にして、人と別れていけたらいいな、
という気持ちで読んでおりました。
ののさんとはなさんが、それぞれ、歳月を経て、人生を選択していきます。
ののさんはフリーのライターの仕事を切り開いていきます。
はなさんの方は、お父さんが外交官だったそうなので、
自分も外交官の旦那さんと出会って、その奥さんになっていきます。
ご主人は、アフリカの小さな国の大使になって、はなさんも大使夫人を務めていくんですけど、
実はなにか、心の空洞を抱えておられて、思い切った選択といいましょうか、
旦那さんと別れて、難民キャンプのボランティアをする、とかアッと驚く選択をします。
その辺のはなさんの心境をこう書いています。
「しかし、真に社会を変革し、ひとの心を打ってきたのは、実ははるか昔から、常識はずれな言動だったのではないかとも思う。古い考えかたや規範に縛られていた人々の魂を解放し、「自由」の意味を更新しつづけてきたのは、「突拍子もない」と評されるような行いをするひとだったのではないでしょうか。」
(本文P431より)
ということで、はなさんはご主人と別れて、アフリカの難民キャンプに入っていくのですが、
ここでちょっと、私はご主人の外交官が気の毒に思えてきたんですね。
急に三行半を突き付けられて、、、
そうするとですね、小川さんも中島さんに、
「後藤さん、やっぱり男の見方は甘いですね。」と言われまして、
そういわれたら、そうかもしれないかな、と思ってですね、、、。
日ごろ、女性たちの理不尽なあれに悩まされているので、つい、磯崎外交官に同情をしました。
ののさん、はなさん、それぞれ自分で人生を切り開いていく、そういうところも大変共感を持てる作品でした。