8月16日、京都では五山の送り火が行われました。
昼間は真夏の太陽が照り、青空が見えていたのに夕方、雲行きが怪しくなってきて
ちょうど点火の時刻、20時頃には傘を差しても意味がないほどのざーざーぶり。
関係者の方々のご尽力で、無事点火はなされたようでしたが、東山のあたりはもやもやと霞がかかるばかりで何も見えません。
←この雨の向こうで東山如意ヶ嶽の「大」が燃えている(はず)
この写真でうっすらと明るいのは、おそらく松ヶ崎妙法の送り火(のはず)だと思うのですが、
警備の方に、場所を尋ねなければ火の場所さえも判別できないほどです。
しかし不思議なことに、せっかくこのときのために長い時間待っていたはずの多くの人たちの間には、それほど不満のようなものは感じられませんでした。
自然の力の手前、当然といえば当然かもしれませんが、なんとなく皆がこの非日常的な豪雨を受け入れているように思われたのです。
火がどこかわからないから、とごうごうと流れる鴨川に向かって手を合わせる女性、
火が燃えているはずの方向をただじっと見詰める夫婦、
送り火は見られなかったのに、なんだか楽しそうに帰って行く親子・・・。
隣の人の声も聞こえないほどの雨は、還りゆく魂たちの存在をむしろ強く感じさせるものだったのかもしれません。
河合隼雄が倒れたのは2006年8月16日の夜。
早、10年が経ちました。
この日は河合隼雄のもうひとつの命日なのです。
大の雨男であった河合隼雄が山の向こうに帰っていくのを、ただただ、雨に濡れながらお見送りしたような
圧倒的な夏の夜でした。
この一年、どうかまた私たちのことを見守ってくれますように。