2017109日、

募集人数をはるかに上回る申込を受け、

期待高まるなかで谷川俊太郎さんのインタビューと朗読の会

「谷川俊太郎さんが語る河合隼雄:仕事仲間・あそび友達」が開かれました。

谷川俊太郎さんが河合隼雄を語る会としては、2015年の京都でのイベントに続く第二弾です。

今回は東京で、学習院大学心理相談室との共催での開催でした。

 

 

谷川さんは、冒頭でまず

ご自身が目白駅のコンビニで大事な手提げを忘れ、騒ぎになったことに触れました。

 

そして実は本日の聞き手・河合俊雄も

このイベントの前に出席していたセミナー会場にスーツケースを忘れ、

今、届けてもらう途中だという二人の似たような失敗談を披露し、

河合隼雄の忘れ物がひどかったことにもふれられました。

谷川さんは笑いのとり方もうまいのですが、

とられ方も一流です。

 

 

河合隼雄が谷川俊太郎さんと最初に出会ったのは対談『魂にメスはいらない』を通じてです。

そこで河合隼雄がいわゆる学者とは全く違う気さくさで接してくれたのがうれしかったとし、

河合隼雄の文化功労賞受賞を記念して作った「かわいのいわい」を朗読してくれました。

 

そして、自分の詩を取り上げて解釈してくれたのがおもしろかったということで、

その付録に載っている詩をいくつかと、それに対する河合隼雄の解釈の朗読が続きます。

 

 

 

たとえばそれは内向—外向に関係する詩などですが

谷川さんの非常に直観的で感覚的に詩を作っていくところと、

それを外から見る両方の視点があるところは印象的でした。

(河合隼雄 谷川俊太郎 『魂にメスはいらない』講談社プラスアルファ文庫 付録部分参照)

 

河合隼雄は物語を得意とし、詩を苦手としていたにもかかわらず、

谷川さんの詩は理解できるとしていましたが、

それは、谷川さんが常に現実とつながろうとしていたことや

読者からするとどう聞こえるのかというように、

ひとりよがりにならない視点を持とうとしていたのと関係しているかもしれません。

 

休憩を挟んでの後半は、客席におられた工藤直子さんからのリクエストで

「さようなら」という詩から始まりました。

これは谷川さんがご自身の詩から10篇を選ぶとしても

その中に入るというものだそう。

 

 

ぼくもういかなきゃなんない  

すぐいかなきゃなんない  

どこへいくのかわからないけど  

さくらなみきのしたをとおって  

おおどおりをしんごうでわたって  

いつもながめてるやまをめじるしに  

ひとりでいかなきゃなんない
 

・・・

(谷川俊太郎 詩集『はだか』/谷川俊太郎詩選集 (2)に収録、一部引用)

 

谷川さんの詩は、どうしてこんなにストレートにこころに入ってくるのでしょう。

谷川さんの声は、どうしてわたしたちを揺さぶるのでしょう。

 

後半では、詩作の秘密に迫ることも教えていただきました。

朝目覚めたときに、何かの中核的な言葉のようなものが浮かんでくることがある。

それを大切にしているうちに詩ができてくることがある。

 

あるいは言葉というよりは調べのようなものが出てくることがあり、そこから詩が生まれることもある。

さらには明瞭なイメージが先立つことがあるということでした。

このように詩作にもいろいろな生まれ方があるのは非常に興味深いことでした。

 

河合隼雄は非常に駄洒落が好きで、

谷川さんの「ことばあそびうた」がとても気に入っていたのですが、

ことばあそびを詩にするには、いろいろと制限があって

非常に時間がかかるというのは驚きでした。

 

河合隼雄は駄洒落を連発していたのですが

それでは詩のレベルに達していないとのことです。

・・・・・・。

 

 

最後には、「死」について二人に共有するところがあり、

また河合隼雄は幼少時から自分が死ぬことの恐怖があったのに対して、

谷川俊太郎さんは母親が死ぬことへの恐怖があったのが違いだと述べられ、

河合隼雄を悼む「来てくれる」で感動的にインタビュー・朗読は閉じられました。

(「来てくれる」は、『悼む詩』東洋出版/ 河合隼雄『泣き虫ハァちゃん』新潮文庫 に収録されています。

こちらの記事で一部引用)

 

最後に共催の学習院大学の川嵜克哲教授が終わりの挨拶をされましたが、

倒れる間近の河合隼雄が、「今日はこれから友人の谷川俊太郎さんと一緒に山に行く」と

とても楽しみな様子で語っていたという、個人的な思い出が披露されました。

 

 

川嵜教授は、それが今回のインタビューでも話題になっていた戸隠の会のことだということ、

そして河合隼雄は本当に谷川さんを友だちと思っていたのだなあ、と

この会で確信を得ることができたと語られていました。

 

本イベントでは本当にたくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。

多くのあたたかいご感想をいただきうれしく思っております。

キャンセル待ちでご案内できなかった方々も多く、申し訳ありませんでしたが

谷川さんと河合隼雄の交流の場がこれほどみなさまに関心をもっていただけたことは

今後の財団の活動を後押ししてくれるものとなりました。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。