近年日本においても、「ハロウィン」が年中行事の仲間入りを果たしています。

しかしそれがケルトにおける「サウィン」という冬のはじまりを告げ、

また新年を祝う祭に起源を持つことはあまり知られていないのではないでしょうか。

 

新年の11月1日に向かう夜では、ふだんは閉ざされている「この世とあの世」の間の扉が開かれ、

死者たちがこの世に戻ってくると信じられていました。

そのように考えると、今のハロウィンで子どもたちがもらうお菓子は、

実は死者たちへの供物であることがわかるのです。

本書は「サウィン」をはじめとするケルトの四つの季節祭を描いていくことで、

あの世と交流する循環的な生命観を見事に描きだしています。

 

実は河合隼雄もケルトには強い関心と共感を抱いていて、

アイルランドを旅した経験をもとに『ケルトを巡る旅』(講談社+α文庫)という本を著しています。

「サウィン」の風習から、お盆のことを思い出した人もいるかもしれませんが、

ユーラシア大陸の端どうしに、世界観やお話の共通点が多いことに感銘を受けていたようです。

ケルトはキリスト教以前の文化ですが、

ケルトを知ることは「キリスト教以後」の「これから」を考えるために役立つのではないか、

という河合隼雄のことばは示唆的ではないでしょうか。

 

この機会に、是非手に取っていただき、みなさんもケルトの世界への扉を開いてみませんか。