河合隼雄『夢・神話・物語と日本人:エラノス会議講演録』が
装いを新たにして岩波現代文庫から出版されました!
副題にあるように、
もともとは1983年から1988年にかけてのエラノス会議での5回の英語講演を
1冊にまとめて”Dreams, Myths & Fairy Tales in Japan”として
スイスのDaimon Verlagから1995年に出版されたのが最初で、
2013年6月に河合隼雄の七回忌を記念して、
河合俊雄代表理事が訳して岩波現代全書から
『日本人の心を解く―夢・神話・物語の深層へ』として日本語版が出版されていました。
エラノス会議は、人間のスピリチュアリティの探求と東西の思想の出会いを求めて、
ユングなども参加してスイス南部のイタリア語地域のマッジョーレ湖畔の保養地アスコナで
1930年代にはじまった学際的な会議です。
そこには大恐慌からファシズムの台頭へと世界が暗くなっていくなかで、
精神の探求を通して世界に貢献しようという熱い思いが感じられ、
宗教学のルドルフ・オットー、生物学者のアドルフ・ポルトマンなど
多くの高名な学者によって、重要な発表と交流が行われてきました。
そしてそれに呼応するように、河合隼雄の発表にも、
日本のこころを伝えることが単なる珍しいことの紹介に終わらず、
それによって心理学や宗教性の本質を問い直し、
西洋中心のパラダイムからの転換をもたらそうという心意気がうかがわれます。
実際のところ、
このエラノス講演で最初にアイデアを発表することから
河合隼雄の多くの代表作が生まれてきました。
たとえば1983年の明恵についての発表から
『明恵 夢が生きる』(講談社+α文庫)が生まれましたし、
1986年の日本神話についての発表は、
ライフワーク『神話と日本人の心』(岩波現代文庫)に結実しました。
1982年に書かれた
『昔話と日本人の心』(岩波現代文庫)については、
それのさらなる展開が見られます。
その意味では、解説にもあるように河合隼雄の思想のエッセンスがあり、
また最初に考えをまとめ発表した勢いがあるので、
是非ともお楽しみいただければと思います。
『夢・神話・物語と日本人:エラノス会議講演録』の
元になった英語版は電子版でたやすく安価で手に入るので、
こちらもご一緒にいかがでしょうか?