このたび、河合隼雄対談集『あなたが子どもだったころ[完全版]』が、

中公文庫からから出版されました!

 

本書は、河合隼雄の2つの対談集『あなたが子どもだったころ』と

『子ども力がいっぱい』それぞれをⅠ、Ⅱとして合本にしたものです。

 

 

 

Ⅰ.『あなたが子どもだったころ』は、

1985年2月から87年5月まで雑誌『飛ぶ教室』で連載されました。

10名の各界の第一人者の方々に、「あなたが子どもだったころ」

という題で河合隼雄がインタビューしたものをまとめたものです。

 

この雑誌連載は、光村図書出版から同名タイトルで1988年に単行本となって出版。

さらに1991年に楡出版からも長新太さんの装丁で新たに単行本化。

その後、1995年に『あなたが子どもだったころ――心の原風景』(講談社+α文庫)

として文庫化され、たいへん多くの方に読まれ続けてきました。

 

Ⅱ.『子ども力がいっぱい』は、

2005年4月から雑誌『飛ぶ教室』に新たに連載され、

河合隼雄が2006年夏に病に倒れる直前の5月31日に収録された対談まで、

7名の方々のインタビューが収められています。

この河合隼雄の最後の対談連載は、

『子ども力がいっぱい――河合隼雄が聞く「あなたが子どもだったころ」』

のタイトルで2008年に光村図書出版から単行本化されています。

 

 

本書は、河合隼雄のこの最初と最後の2つの対談集を合本し、[完全版]の形で充実の文庫化。

哲学者・鶴見俊輔さんとの1985年と2005年の2回の対談を含め、

16名の方々との17の対談と、

それぞれの対談後に河合隼雄がエッセイを寄せており、読みどころが満載です。

 

対談の各タイトルは、

「子どもが死にたいと思うとき」「子どもが嘘をつくとき」…など、

ドキッとされられるものもありますが、河合隼雄の「聴く力」によって、

それぞれの語りが「豊かに溢れ、流れ出していき」、

「極めて個人的な、個人の内奥の世界へと深く下降しながら、

それが個人を超えて、人間存在という普遍への道につながるところに達しているので、

そこに何らかの「開け」を感じさせる」(p276)のです。

 

さらに本書の魅力に加わったのは、

作家の小川洋子さんによる解説「記憶が物語になる時」。

 

「大人になって行き詰った時、見据えなければならないのは、

未来の達成目標数値、などではなく、過去の子ども時代なのではないだろうか」(p429)

という一文からは、本書が現代社会にこそ必要とされている

「個人の物語」に通じる道しるべとなっていることが示唆されているようです。

 

本書を通じて、自らの内なる子どもを慈しみ、

さらにその思いが他者に広がっていくきっかけになるならば、

こんなに嬉しいことはありません。