このたび、河合隼雄と、

詩人・児童文学作家の長田弘さん(1939-2015年)との対談

『子どもの本の森へ』が、岩波現代文庫から出版されました!

 

 

本書『子どもの本の森へ』は、

子どもの本についての長田弘さんと河合隼雄の対談が

1994年2月から1995年6月にかけて雑誌連載され、

さらに1997年に本書のために対談したものを加えて、

岩波書店から1998年2月に刊行されました。

それが、四半世紀以上を経て、

河合俊雄代表理事による「解説」を付す形で、

新たに文庫化されました。

 

 

本離れが叫ばれて久しい昨今、自分もすっかり本を読まなくなったとか、

そもそも読書は苦手と思う人は増えているかもしれません。

 

しかしここで取り上げられているたくさんの児童文学、絵本の中には、

きっと皆さんが子どものころ夢中になった本、宝物のように繰り返し読んだ本、

あるいはきれいな絵や色に、ただただページをめくった本が、

必ず1冊は登場するのではないでしょうか?

 

子どもの本が大好きな二人が、多くの大人の人たちに子どもの本を読んでほしいと願うのは、

 

子どもの本に語られる「真実」は、

人間のたましいに直接作用してくるように感じられるからである。

(「あとがき」P207)

 

と河合隼雄は述べています。

 

大人たちはもっと子どもの本を自分たちの側に奪い返してもいいんじゃないか、と長田さん。

『ゲド戦記』や『モモ』など、大人がだいぶ必死になって奪い返したものもあるのでは、と河合隼雄。

 

大人が子どもに一方通行的に本を与えたり教えたりするのではなく、

子どもと大人が、本を介して、

教えあったり(奪い合ったり)する関係の大切さも楽しく語られていきます。

 

そして子どもの本の「名作」についての二人の感想・コメントは、

単なる名作ガイドを超えて、子どもの存在や人間存在について、

現代の社会やこころの問題についての本質的な見方がもたらされています。

 

長田さんの発言の中の「詩人の感性」と、

河合隼雄の心理療法家からみる児童文学作品に表現されるこころのリアリティという、

異なる領域の第一人者同士の対話から浮き彫りにされていくという、

河合俊雄代表理事による解説も、さらに本書と子どもの本の魅力を

私たちに伝えてくれるものとなっています。

 

本書を宝の地図のように手に携えて、

子どもの本の、深い森へ、二人の対話に導かれながら、

冒険の旅に出てみてはいかがでしょうか?

 

松尾ミユキさんによる新たな表紙のイラストも、

表紙を見るだけでも、見ている人それぞれ異なるお話が生まれてきそうな、

そんな素敵なイラストです。