先月になってしまいましたが、『新潮8月号』に、
今年も「河合隼雄物語賞・学芸賞」の発表・選評・受賞者のことばが発表されました。
物語賞に選ばれたのは三浦しをんさんの『ののはな通信』で、
これは のの と はな という二人の女性の手紙の交換が織りなす物語です。
中島京子さんは、若き日の二人のみが知る「記憶」に焦点を当てていて、
その記憶がひとを支え、まえに進ませる「物語」になることを指摘しているのが興味深いです。
学芸賞の対象となったのは、
藤井一至さんの『土 地球最後のナゾ-100億人を養う土壌を求めて』です。
世界にある十二種類の土を尋ねていき、解き明かしてくれる物語性豊かな読みやすい学術書です。
「土壌学のドンファン」という見出しからなる中沢新一さんによる選評は、
非常にユーモラスで時にはこき下ろすような語り口のなかに、
受賞者への温かいまなざしが感じられます。
偶然ですが、同じ号に、
代表理事・河合俊雄の中之島香雪美術館での講演
「明恵の夢の現代における意味」も収録されています。
戒を守るという分離を成し遂げたからこそ、
明恵上人の夢には日本人に珍しく象徴性があり、
また女性像との象徴的な繋がりが大切になったのではないか、
ということを指摘しています。
また発達障害が増えている現代において、
分離の意味を考えさせてくれ、
さらには明恵の持つポストモダン性にまで話が及んでいます。
是非ご一読ください。