ハァちゃんの名前は、城山隼雄。六人の男ばかりの兄弟の五番目である。
ハァちゃんは大変困ったことに、泣き虫なのである。平素は楽しく元気にしているのだが、何かの加減で体中がじーんとなってくると、もうたまらない。いくら歯を食いしばって頑張っても涙の方が勝手に流れ出してしまう。
―――『泣き虫ハァちゃん』より引用
河合隼雄・著 『泣き虫ハァちゃん』は、2007年11月に新潮社より刊行されました。
河合隼雄が自身の子ども時代をモチーフに描き出す、
泣き虫で、負けず嫌いで、おもしろいことが大好きな、ハァちゃん少年のおはなしです。
2013年には、中国語版が『愛哭鬼小隼』として刊行されていましたが・・・
この本が、このたび、「新京報2013年度最優秀児童書」に選ばれました。
「新京報」は、北京市で最も発行部数の多い日刊紙です。
河合隼雄の遺作となったこの本が、
国境を越えて多くの人に読まれ、そのこころを動かしたとすれば、
これほどうれしいことはありません。
ずいぶん昔の日本の、それもけっこうな田舎が舞台のおはなしですから
ハァちゃんは、今の私たちとはずいぶん違う生き方をしているかもしれません。
それにもかかわらず、このおはなしを読んでいると
ふしぎと涙が出てきたり、あたたかい気持ちになったり・・。
昔の出来事を思い出したり、
子どもに戻ったような気持ちになったり・・・。
さまざまにこころが動かされたという声を多くいただきます。
このおはなしには、時を経ても色褪せることのないような、
私たちのこころにとって大切なエッセンスが詰まっているのでしょう。
まだお読みになっていない方も
すでに読まれた方も
この機会に、もう一度お手にとってみていただけるとうれしく思います。