この度の能登半島地震により、被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
今年2024年は辰年。
河合隼雄は1928年生まれ、辰年の年男でありました。
ちょうどスイス留学中の1964年に辰年を迎え、
年賀状1枚1枚に龍の絵を水彩で描いたとか。
健在であれば96歳を迎える年ということになります。
辰、龍、竜といえば、十二支の中で唯一、想像上の動物です。
ユング派の心理学者エーリッヒ・ノイマンが、
西洋の物語の研究を通じて「龍との戦い」が
意識の確立の根本となる元型的パターンだと指摘したのに対して、
河合隼雄は、日本の昔話には西洋で現れるような
「龍との戦い」の物語がないことに不思議に思ったといいます
(『日本神話と心の構造』(岩波書店,p224-225)。
そして日本の昔話や神話の研究を通じて、
日本のこころの構造が西洋のそれと異なることを明らかにしていきました。
一方で、『ゲド戦記』などで有名な
アメリカのファンタジー作家・ル=グウィンは、
竜をファンタジーのシンボル(象徴)としてとらえ、
西洋の「英雄」がしばしば竜を殺す事実と、
西洋におけるファンタジーの喪失を関連づけていました。
(『河合隼雄と子どもの目』(創元社,p234)
そのようなことから察するに、
たましいの現実がファンタジーとして現れることから、
ファンタジーや物語を大切にした河合隼雄は、
きっとル=グウィン同様に、龍を殺すことではなく、
龍とのつながりを大切に考えていたに違いありません。
「外的世界と内的世界の両者のかかわりによって、
人間存在は確かな位置づけを得るのである。(中略)
そのためにファンタジーは大きな役割を背負っている。」
(同書,p218)
そんなことを考えながら、
新しい「辰(龍)年」を迎えてみてはいかがでしょうか?
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。