河合隼雄の『こころの処方箋』についての記事が
先日(12月20日)の日本経済新聞朝刊「春秋」欄でとりあげられました。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO95335370Z11C15A2MM8000/
この記事の反響は大きく、『こころの処方箋』に再び注目が集まっているようです。
そこで、この記事では少し違った角度からこの本についてご紹介したいと思います。
この本は河合隼雄が『新刊ニュース』として連載していたものが元になっており
55の短い章からなっています。
解説は谷川俊太郎さんです。
日経新聞の記事でもとりあげられた「マジメも休み休み言え」などは
(くだらない)冗談が大好きだった河合隼雄を象徴するような文言で、
ツイッターなどでもよくツイートされています。
河合隼雄自身が「あとがき」で書いているのは、
「既に読者が腹の底では知っていることを書いている」、つまり「常識」を書いているということです。
しかし、常識というのは語るのは難しく、
皆がそれを当たり前に共有できなくなった現代においては、わざわざ常識を語らなければならなくなっている、
というのです。
常識を書くというのは、やってみるとなかなか苦労するとのことで
「大いに四苦八苦して、ひねり出してきたので、
タイトルを見ると「非常識」に見えるのがある。
あれっと思って読むと、なかには極めて常識的なことが書かれており、
読者は、「フム、フム」と納得する、というわけである」
・・・ 冗談混じりのこの一節に、この本の本質が表れているといえるかもしれません。
確かに、「常識」とはなかなか難しいものです。
たとえば 「心のなかの勝負は51対49のことが多い」とか
「のぼせが終るところに関係がはじまる」などというのは
河合隼雄の臨床経験があってこそ、出てくる言葉のようにも思います。
ひとつひとつの章は短いのですが、物語や臨床例の引用なども多く、
意外に読み応えがあり、時に心が痛んだりもするかもしれません。
良薬口に苦し。
年末年始のお休みに、自分のこころに「処方箋」を与えてみるのもいいかもしれませんね。