〈物語と日本人の心〉コレクションⅣより、河合隼雄『神話の心理学 現代人の生き方のヒント』が岩波現代文庫より発刊となりました。
本書の内容は、季刊誌『考える人』(新潮社)に2002年夏号~2005年春号まで「神々の処方箋」として
連載されていたものが元になっていて、
その後、2006年に大和書房より同タイトルで単行本化されていたものです。
解説は哲学者、宗教学者としてで独自の研究を展開されている鎌田東二さん。
神話の心理学、といっても、この本は神話そのものを直接解釈するというより、
むしろ、神話から読み取れる「知恵」を河合隼雄なりにわかりやすく示した本といえるのではないかと思います。
「考えてみると、人間が生きていくということは大変なことである。
自分という唯一の存在はいったい何によって支えられているのか、
しかも、必ず死ぬとなると、死んでからはいったいどうなるのか。
人間の一人ひとりがこのような根源的な問いをかかえて生きている」
(第1章 不安や孤独の原因 より)
現代人は特に、忙しい毎日を送り、神話などは自分には関係のないことだ、と思っているところがあるかもしれません。
しかしながら、いくら科学技術が発達し、社会が成熟してきたとしても
上記のような根源的な不安と無縁でいることはできない、
そこに何らかの支えを与えてくれるものが神話の知恵といえるのかもしれません。
本書のもうひとつの特徴は、「神話」という言葉から連想される「難しそう」、「自分に読めるのだろうか」という印象を
払拭してくれるような、「お話」がベースとなっていることです。
たとえば、第5章には動物神のお話がとりあげられていますが、
世界各地にいろんな動物の神様がいて、いろいろなお話として語られているって、純粋におもしろい事実のように思えます。
とりあげられるテーマは幅広く、現代人なら誰もがつきあたると思われるような
自分の問題、男女の問題、家族の問題、悪という難問・・・と多岐にわたって展開されています。
ぜひお手にとってみてください。
岩波書店様のHPがリニューアルされていますので、そちらものぞいてみてくださいね。