河出書房新社から出版されていた、河合隼雄『私の語り伝えたかったこと』が文庫になりました。
装丁も素敵です。
帯にあるように、今年は河合隼雄の没後10年にあたります。
この本は講演やインタビューなどで語られた河合隼雄の言葉を集めたもので、
解説を河合俊雄が書いています。
解説の中でも勧められていますが、「夢の中の「私」」は特におすすめできるものといえるでしょう。
河合隼雄が具体的な夢をあげながら、「私」というものについて深めていく論考で、
一般に出ているものではあまり類似のものは多くないために貴重なものであると思われます。
この本に収められている論考は多様なものなので、一口にご紹介するのはなかなか難しいかもしれません。
解説から一節を引用してそのエッセンスをご紹介することにしたいと思います。
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教育について述べているいくつかのインタビューをはじめとして、
本書の内容は発表時の社会的な状況や出来事にかなり依存している。(中略)
しかしそれでもここで語られている内容そのものは、古くなっていないように思われる。
それは著者が何かに迎合したり、極端にある方向を推進したりしようとしていないことによると思われる。
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著者は伝統的な生き方に回帰することも、
西洋的なあり方を進めていくことも主張していず、
その対立と矛盾の中で個別の答えを探そうという姿勢を取っている。
それは読者に自ら考えさせることを可能にしていると思われ、だからこそ古くなっていかないのであろう。
(河合俊雄 解説「その時のことば、今聞くことば」より)
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一章は長いものではないので、興味のあるところから読んでいくのもいいかもしれませんね。
3月は出会いと別れの季節です。
皆様にすてきな春が訪れますように。