河合隼雄『こころとお話のゆくえ』が河出文庫より発刊されています。

この本は、京都新聞に「平成おとぎ話」と題して1995年8月~1999年12月まで

月1回のコラムとして連載されたものがもとになっています。

 

『平成おとぎ話』として2000年に潮出版社から刊行され、しばらくの間

絶版になっていましたが、このたび改題して復刊されることとなりました。

 

「幼少時の親子関係の大切さ」

「センチメンタルの効用」

「「だから」と「だって」」

「無意識の発見と仏教の「唯識学」」

「編集者におだてられ旧悪の暴露」

・・・と、テーマは多岐にわたっています。

 

解説は代表理事の河合俊雄が書いています。

解説によれば、それぞれのテーマが広がりと深まりを持っていると同時に

軽妙な語りできかせてくれるものになっているとのこと。

 

「それぞれの話に笑えるオチがついていたり、

あるいは仏教のことなどでまじめになりすぎたときに

それにブレーキをかけるジョークがはさまれていたりして、なかなか楽しめるし、

そこには著者の独特のバランス感覚が生きているとも言えよう。

時には関西人からすると、「すべっている」と思われることもあるが、それもご愛敬である」

(解説「河合隼雄のたましいの月報1995~1999」より)

 

そういえば、村上春樹さんも公開インタビューで

河合隼雄のだじゃれがよくすべっていたことに触れていましたね。。。

 

河合隼雄の日記風スタイルのため、当時の河合隼雄が

いかに多様な活動をし、その中でどんなことを考えていたのかが

見えてくる一冊となっています。

 

河合隼雄の文章は軽い語り口の中にも、

私たちにとってとても大切なことを考えさせてくれるものが多いのですが

この本もそうした性質をもっていて、

それぞれの短い章の最後の一文が残す余韻の中で、私たちの思考と想像が膨らんでいくような気がします。