本財団の「河合隼雄物語賞・学芸賞」の選考委員である山極壽一さんと小川洋子さんの対談

『ゴリラの森、言葉の海』(新潮社)が出版されました。

 

 

山極さんには学芸賞を、小川さんには物語賞の選考委員をそれぞれご担当頂いております。

これは、2014年2月10日に本財団で行われました、

「河合隼雄物語賞・学芸賞記念講演会」での公開対談からはじまり、

その後3回の対談を経て、それらを元に編集されています。

 

 

主に小川さんが山極さんのゴリラの研究や体験を聞くというスタイルになっていますが、

そこから人間の家族、性、暴力、言葉についての本質的な洞察が導き出されていて、

考えさせられることが多くあります。

 

物語ということに関連しては、動物には存在するものしか意味がないのに対して、

人間には不在が意味を持つので物語をつむげる、というのは興味深い示唆です。

 

小川洋子さんの創作にも話が及んで、

小説を書く前には俯瞰できるけれども、そこから入口を探して一行目を書くと、

もう全体を見渡すことはできなくなる。

そして小説を書くということも、実は身体と強く結びついていて、

自分の中から無理やり絞り出したものよりも、

「外からの情報でひらめいたもののほうが、圧倒的に広がり持ちます」

というのもおもしろいです。

これも山極さんが、河合隼雄と話していてひらめいたという、

心は身体の中に宿るのではなくて、外にあるということにも関係があるのかもしれませんね。

 

河合隼雄と小川洋子さんとの対談は、

『生きるとは、自分の物語をつくること』(新潮文庫)で読むことができます。