すっかり更新が遅くなりましたが、昨年10月に文庫版で復刊された、
『声の力―歌・語り・子ども』
(河合隼雄・阪田寛夫・谷川俊太郎・池田直樹;岩波現代新書)
のご紹介です。
今、世界はCOVID-19の感染拡大の最中にあり、
さまざまに錯綜する声――切実で悲痛な声、 怒りの声、はげましの声、感謝の声などなど――
が巷に飛び交っています。
また、「3つの密を避ける」ことの必要性から、
私たちは他者との間に物理的な距離をとらなくてはならず、
その疎外感に、寂しさや不安、心細さも実感しているかもしれません。
そんななか、“声”の、人と人とを結びつける“力”について、あらためて考えさせられる一冊です。
ここでは、語りの専門家(?)の河合隼雄をはじめ、
童謡作家の阪田寛夫さん、詩人の谷川俊太 郎さん、声楽家の池田直樹さんといった、
声の魅力を語るのにふさわしい第一人者たちが、縦横無尽 に論じた講演や座談会、
エッセイなどが収録されています。
どの講演も、エッセイも、座談会も、その語り口はリズムよく軽快で、とても愉快な気持ちになります。
童謡作家の阪田寛夫さんが次々にあげる童謡やわらべうたは、
たとえこれまで聴いたことのない歌であ っても、声に出して読むだけで、
愉快な気持ちになってくるから不思議です。
声楽家の池田直樹さんは、声を持たない人の歌――全身から表現される声なき「声」、
声の持つ力、 歌の持つ力について、
詩人・谷川俊太郎さんは、言葉になる前の、音としての声のもつ力、
「声に出され た言葉にひそむ意味を超えた力」について。
そして河合隼雄は、「内なる声」について、などなど、どれも引 き込まれる語りばかりです。
その内容はずっと深いレベルまで掘り下げられているにもかかわらず、
喉越しのよい文章ばかりなのは、
やはり言葉~言葉になる前の言葉まであらゆるレベルの言葉に卓越した方々の 言葉だからでしょう。
皆さまも、さまざまな「声の力」について考え、そして味わってみませんか?
岩波現代文庫『声の力―歌・語り・子ども』のページは
こちらからどうぞ→https://www.iwanami.co.jp/book/b480355.html