河合隼雄著 『ファンタジーを読む』が岩波現代文庫より発刊されました。
河合俊雄代表理事が解説を書いています。
本書は、子どもやファンタジーをテーマにした河合隼雄の著作シリーズのひとつです。
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児童文学の名作を読むと、心を洗われたように感じたり、癒やしを感じたりする。
あるいは生きてゆくための勇気を与えられたように感じるときもある。
ここに取り上げたどの作品もそのようなものばかり、
おせっかいと言われるのを覚悟の上で、
誰にでも「こんな本読まないと損だよ」とすすめたくなってくる。
◇
大人はどうしても、この世のシステムや仕組や、いわゆる常識というものにとらわれるので、
たましいのことが見えにくい。
その点、子どもの目は端的に「たましいの現実」を見る。
子どもの目で見た現実がそのまま語られるので、
児童文学はたましいのことに深く関係しているのだ。
◇
このように考えるので、私は心理療法家の必読の書として、児童文学を読んでいる。
それは暇つぶしとか余技などというものではない。
たましいのことについて知るのは、知的ないとなみではなく、
自分の存在全体にかかわることである。
(本文より抜粋・引用)
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児童文学は決して子どもだけのものではなく、
大人が「たましいの真実」に触れるための通路とも言えるでしょう。
フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』、ル=グウィン『影との戦い ゲド戦記Ⅰ』・・・
児童文学の名作を河合隼雄はどう読むか、
ぜひそれぞれの物語の原作と共にお楽しみください。