子どもの「悪」についてよく理解することは必要であるが、
それは決して甘くなることを意味していない。
理解することと厳しくすることとは両立し難いようだが、
理解を深めれば深めるほど、厳しさの必要が認識されてくるので、
厳しさも筋金入りになってくるのではなかろうか。
――河合隼雄『子どもと悪』〈子どもとファンタジー〉コレクションⅣ 岩波現代文庫より
1997年、「今ここに生きる子ども」シリーズの一冊として、
岩波書店より『子どもと悪』が刊行されました。
それから約15年が経った2013年12月17日、三本の論考を加え、
この書が再び文庫として発刊されました。
タイトルの通り、本書では子どもをめぐる「悪」について、
盗み、暴力、うそ、秘密、性、いじめ……と様々な観点から論じられています。
論考は「悪のもつ創造性」という、「悪」の一般的イメージとは反対の地点から始まります。
しかし本書は、悪のポジティブな側面に言及しただけのものではありません。
「悪」は良いものだとも、不必要なものだとも言い切れぬ、
しかし我々が今、真剣に向き合うべきものなのだと、
著者自身が決して安易な結論を出さず、葛藤しながら厳しくそれと対峙していくために、
読む者にも自然とさまざまな思いが湧き起こってきます。
「悪」という大きな課題にさまざまな光を当て、著者なりの考えを示しながらも、
その答えがオープンにされているため、
今日を生きる私たちにとっても色褪せず、
新しい視点を与えてくれる一冊となっています。
解説は臨床心理学の岩宮恵子教授です。
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