先日の谷川俊太郎さんのイベントには数日間に合わなかったのですが、
10月16日、『読む力・聴く力』が岩波現代文庫より復刊しました。
これは、2005年に小樽市民会館で行われたセミナーが元になった同題の単行本の文庫化で
現代文庫版のあとがきを立花隆さんが書かれています。
本の構成は一風変わっていて
まず、三人の著者が「はじめに」を書き、
次に、河合隼雄と立花さんの講演、谷川さんのアンソロジーと続いています。
この時点で読者は、三者がいかにそれぞれであるのか、ということを目の当たりにするしかなく
次にやってくる三者のシンポジウム記録を読むのが怖くなるほどです。
しかし、不思議なことに話は非常に現代的なところで展開されていきます。
このインターネット情報社会において、いかに人の可能性が広がり、いかなる危険性があるのか。
そこでは出会いとあきらめが必要なのだ、と。
とても10年前のセミナーの記録とは思えないほど、今の私たちの感覚にリアルに迫る話が展開されるのです。
頭に浮かんだことをそのまま文字にしていくような小説の書き方が今、流行っているけれど、
実はそれは、ずっと昔から日本の文化の中にあったことなんだ・・・などなど、
他にも興味深い話題がたくさん。
立花さんのサイエンスの視点、谷川さんの詩的・身体的な視点、
河合隼雄の臨床的な視点が見事にいろいろな角度から、
今わたしたちが置かれている社会のあり方を映し出していくシンポジウム、
ライブできいてみたかった!と思わされるくらい引き込まれます。
ぜひご一読ください。