2014年10月15日(水)京都府民ホールアルティにて
河合隼雄先生没後七年追悼『紫マンダラ』「紫式部といふものありけり」が上演されました。
はじめの笠谷和比古教授のご挨拶では、
河合隼雄が関西楽劇フェスティバル協会の初代会長をつとめたところからのご縁、
笠谷教授が河合隼雄の『紫マンダラ』を読んでぜひ劇にしたいと思ってくださったこと、
京都の朗読グループ「木もれ日Genji」様との出会いでこのたび実現に至ったことなどが
紹介されました。
幾度となく読まれ、解釈され、描かれ、演じられてきたこの物語が今なお、新しい形で演じられるとは
驚くべきことでしょう。
朗読劇は、本格的な衣装と音楽、照明によって美しく演じられ、秋の京都の夜をしっとりと彩りました。
空蝉の 身をかへてける 木の下に なほ人がらの なつかしきかな
(木の下に蝉が抜け殻を残していくように、あの人も衣を置いて行ってしまった。あの人のお人柄も衣も、なお懐かしく思われることよ)
以下、財団代表理事・河合俊雄のご挨拶(パンフレット掲載)より引用し、ご紹介します。
この朗読劇・楽劇「紫式部といふものありけり」は、河合隼雄の『紫マンダラ』(小学館、2000年、後に講談社+α文庫、キンドル版)に
基づくものとされています。(中略)その内容は、今回の楽劇のポスターにもある
「『源氏物語』は、新しい女性の生き方、紫式部の個性化の物語である」にほぼ集約されていると思います。
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恋をしていく光源氏を通して、母、娘、娼婦など、様々な種類の女性のあり方が描かれている方が重要であると思い至ったのです。
またそれは紫式部の持っている様々な女性の側面を示し、それがマンダラのような構造になっているという意味で、紫マンダラと呼んだのです。
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しかし河合隼雄の解釈は、マンダラという全体構造の分析にとどまりません。
浮舟に着目すると、最初は全く受動的に生きていた女性が、死の淵から奇跡的に生還してから、男性を拒んで生きる姿が浮かびあがります。
「自分のなかから生じてくるものを基盤にもって個として生きる」女性の姿なのです。
ここには、心理療法家として、自分を無にすることによって、相手のクライエントの様々な姿を浮かび上がらせてきた経験や、
また様々な側面があるという洞察にとどまらず、
クライエントが受動性から立ち上がり、一つのものを主体的に選んでいく転機に立ち会ってきた経験がこめられていると思います。