7月8日(金)、京都市内にて第四回河合隼雄物語賞・学芸賞授賞式・授賞パーティーが開催されました。

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今年の物語賞はいしいしんじさんの『悪声』(文藝春秋社)でした。

選考委員を代表して小川洋子さんからの講評では、珍しく、早くから選考委員全員が一致してこの作品を選んだと述べられました。

ただし、そうはいっても静かな会だったわけではなく、この作品を読むのがいかに大変かということについて

言葉のプロたちが表現を駆使して述べ合うような選考会に・・・。

「どこかをつかまれていることはわかるのだが、どこをつかまれているかわからないので振り払えない」という

宮部みゆきさんの言葉を引いてこの作品の ”ただものでなさ” が語られました。

確かに、受賞決定後、財団にもこの作品を読んでたいへんな体験をされた方からのお言葉、たくさんいただきました・・・(汗)!

 

いわば「物語の原液」のような、まさに河合隼雄物語賞にふさわしい作品です。

 

いしいしんじさんの受賞スピーチでは、まさにこの季節に『悪声』を書いていたことが語られると共に

いしいさんがこの作品をかくときに掲げていた言葉が発表されました。

それはなんと「わかりやすく書こう!」

そうか、これ、わかりやすく書かれてたんだ、とどこか腑に落ちたような、いや落ちないような!

 

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続いて学芸賞は、武井弘一さんの『江戸日本の転換点ー水田の激増は何をもたらしたか』(NHKブックス)です。

選考委員を代表して、山極寿一さんより正賞、副賞が授与されました。

山極さんの講評は、自然科学と人文科学をつなぐようなお話で、もはやひとつの講演なのかと勘違いするほど。

 

武井さんの受賞スピーチでは、この作品が実は2011年3月11日の東日本大震災がきっかけとなってできた本だと語られました。

選考理由などで生態環境を包括的に描いたところが評価されていたのからすれば少し意外でもありましたが、

「危険」には自然から一方的に受けるデンジャーと、

ヒトの行為が生じさせるリスクがあって、我々が危機に直面した今、

江戸時代から歴史をたどることによって、リスクがどのように生まれてくるのか、我々はそれにどのように対応できるのかを

歴史研究者の立場から真摯に考えた作品といえるかもしれません。

 

また、最後には河合隼雄への感謝と共に、こんなエピソードが語られました。

ご自身が高校の先生として赴任したての頃、生徒たちとの関わりに苦心され、

そのときに国語の教科書に載っていた河合隼雄のエッセイ「心の鉱脈」をふと目にされたそうです。

そこには、人間には身体のエネルギーとは別に心のエネルギーがある。

その鉱脈を掘り当てることは新たな力となるとあり、大いに励まされたと述べられました。

この賞が武井さんの新たな心の鉱脈を掘り当てることになったならとてもうれしいことですね。

 

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授賞式では音楽を愛した河合隼雄にちなみ、ミニコンサートも行われました。

今年の演奏者は池上英樹さん。『悪声』に登場する「サンタルチア」がサプライズで披露された後、

マリンバでバッハとピアソラを演奏していただきました。

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マリンバ、普段なかなか見ることはありませんが、

ものすごく大きいです。なんとバイオリンからチェロまでの音域をカバーしているとのこと。

深く、美しく、かわいくもある音の連なりに会場が魅了されました。

池上さんは河合隼雄が文化庁長官時代に文化庁芸術祭音楽部門新人賞を受賞され、

河合隼雄から直接授与された方でもあります。

すばらしい演奏を本当にありがとうございました!

 

そして、受賞のお二方、すばらしい作品たちにも改めて感謝いたします☆

おめでとうございました!!!