2015年7月3日夕刻、7月にしてはやや涼しい夏の京都にて
第3回河合隼雄物語賞・学芸賞授賞式が行われました。
河合俊雄代表理事は、社会のはじまりでもある「3」という数の意味について触れ、
点が線になった第2回を経て、
この第3回で河合隼雄の名を冠する2賞のかたちが見えてくるかもしれないと挨拶を述べました。
続いて、河合隼雄のフルートの師匠であった水越典子さんによるミニ・コンサートです。
元々、河合隼雄の大ファンであったという水越さんは、
「先生の先生」になった際のエピソードや河合隼雄との音楽を通じた交流についてお話をされ、
自ら選曲された3曲を披露してくださいました。
この様子はまた、別の記事でアップします。
そしていよいよ授賞セレモニー。
今年は、物語賞選考委員を代表して小川洋子さんから、中島京子さんへ
正賞・副賞が授与されました。
小川さんは、この賞がいわゆる「文学賞」ではなく「物語賞」である意味について考え続けてきて、
『かたづの!』という、それにふさわしい作品に出会えたことの喜びを述べられました。
中島さんはそれに応えるように、この作品はいわゆる歴史小説とは異なるファンタジーだけれども、
歴史という、一見事実のように見えるものよりも、
むしろ鮮やかに我々に真実を伝えてくれる「物語」の力によってこの作品が書けたと受賞の喜びを語られました。
学芸賞は、選考委員を代表して中沢新一さんより、大澤真幸さんに
正賞・副賞が授与されます。
中沢さんは、既存の社会学の枠組みを超えてきている大澤さんの最近の仕事を評価し、
言葉やロゴスからたちのぼる「色気」について、ユニークな論を展開しました。
大澤さんはこれを受け、
あるレベル以上の深さに到達しようとするとき、そこに必要なのは抽象的な概念や論理ではなく
物語であることを述べ、
物語性のある作品に贈られる本賞受賞の喜びをさまざまな思いや感謝と共に語られました。
お二方の受賞のことばは、まさにその場で身をかけたものであり、
会場の参加者の方々からは感激した、心打たれたという声が多く聴かれました。
「選評」(物語賞:宮部みゆき委員 学芸賞:岩宮恵子委員)と
受賞者お二人による「受賞のことば」は、7月4日に発売された『考える人』2015年夏号(新潮社)にも
掲載されています。
http://www.shinchosha.co.jp/kangaeruhito/
ぜひご一読ください。
(実際の授賞式と同様に京都の学派の伝統に則り、呼称を「~さん」と統一しています)